命の尊さを再確認するドキュメンタリー映画2選|『彼女が選んだ安楽死』『帆花』レビュー

先日、珍しく寝かしつけから生還して起きてこれたので映画でも観よう~と2本のドキュメンタリー映画を観ました。

何気なく見始めた映画でしたが、これが目が離せなくなるほど魅力的で、生きること&死ぬことについて深く考えさせられる作品でしたので紹介します。

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『彼女が選んだ安楽死』:命がけのラストメッセージ

1本目に紹介するのは、『彼女が選んだ安楽死〜たった独りで生き抜いた誇りとともに〜』です。パーキンソン病を患う迎田良子さん(64歳)が、自らの意志でスイスへ渡り、安楽死を迎えるまでを追った作品です。

無償で「死に様」を公開した凄みと社会性の高さ

何よりすごいのは、自分の死に向かうプロセスをここまで赤裸々にカメラに捉えさせた、迎田さんの姿勢です。 彼女自身は完成した映画を観ることはできませんし、出演の報酬を受け取るわけでもありません。本人にとっての個人的なメリットは皆無なのです。

お金や損得で動く資本主義社会の中で、何の見返りも求めず、自分の生と死のすべてを世界に公開したその姿は、まさに「自分の人生のすべてを賭けた、最後の作品」のように見えました。

また、病気の苦痛を抱えながら、英語での膨大な書類手続きや厳しい審査を、時間をかけて合法的にやり遂げた意志の強さにも圧倒されます。普通は自暴自棄になったり焦ったりしそうな状況で、ここまで冷静に社会のルールに則って行動できるなんて、なんて社会性の高い人なのだろうと尊敬しました。

強い彼女が見せた「原因が欲しい」という本音

そんな聡明で強い彼女でも、「どうして病気になったと思いますか?」という質問に対し、「30代の頃の流産手術で、麻酔を入れすぎたのが原因だと思う」と強く語っていたシーンが印象的でした。


おそらく医学的根拠はないのだと思います。けれど、どんなに強い人であっても、自分が病気になったことに対して「何かしらの理由」を見出さずにはいられなかったのだろうな、と人間のリアルな心理を感じました。受け入れらないですよね。進行性の病気になった事実なんて、なかなか。

何かしら原因が欲しいと思うのは当然だと思いました。

「何も持たずにすっきり手放す」という自然さ

直前になって、同行するはずだったフランス人の元婚約者に断られてしまうのですが、彼女は「仕方のないこと」と素直に受け入れていました。

「家族がいないと寂しい」と言う人もいるかもしれませんが、死にゆく姿を見せるのは相手の負担になりますし、別れも辛くなります。どうせこの世で得たものはすべていつか手放さなければならないのなら、家族も友人関係も何も持たずに、すっきりさせてお別れしていくというのは、とても自然で良いなと感じました。少しも寂しいことではありません。

実際、彼女は「後悔もやり残したこともない、幸せな人生だった」と言いきっており、1人で亡くなる悲壮感はゼロでした。むしろ「やりきった!」というすがすがしい表情をしていて、とても共感できました。

【私の体験】エンディングノートを書いていた私が、映画を観て気づいたこと

実は私は、ちょうどつい先日、遺言書とエンディングノートを書いたばかりでした。というのも、私が生きている中で常に恐ろしいと思っているのが、閉じ込め症候群のように「自分の意志ははっきりしているのに体が動かせなくなる状態」だからです。それが怖くて、夜眠れなくなることがあるほどです。

私はせかせか自分で動くことを大事にしています。思いついたことは何でもやりたいし、手をつかまれて動かせなくなることにも強い恐怖があります。だからこそ、延命治療は望まず日本の公的保険適応の治療だけを望むこと、そして意思疎通がとれなくなった時はスイスでの安楽死も含めて検討してほしい、とエンディングノートに書き残していました。(書いたらちょっとすっきりしました!)

しかし、今回の映画を観て驚愕の事実に気づかされました。 スイスでの安楽死は、書類の記入やメールのやり取り、医師との意思確認を含め、すべて通訳を介さず自分自身の英語で行う必要があります。さらに最後の瞬間には、動画で録画される中、医師の質問にはっきりと受け答えし、投薬も自分の手で行わなければならないのです。

「えっ、寝たきり状態になってからじゃ、安楽死の手続きってできないんじゃん……!」

これにはちょっとがっかりしてしまいました。ただ、事前に延命治療を望まない表明をしておくことはやっぱり大事だなと再確認できましたし、何より「これからも英語をしっかり勉強し続けよう!」という新たなモチベーションが湧いてきました。

支援団体「ライフサークル」の自然な対応

映画を観ていてもうひとつ好印象だったのが、支援団体「ライフサークル」のスタッフの対応です。
実行の直前という重い空気になりそうな瞬間でも、「お腹すいてる?何か食べる?」と、拍子抜けするほど自然に接してくれるのです。その対応がとても温かく、もし私がいつか同じような選択をするなら、この団体にお願いしたいなと思いました。

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2022年、迎⽥良⼦さん(64)が安楽死するためにスイスに渡った。重い神経難病を患ってきた彼⼥は死の直前、⽴ち会った記者に語りかけた。「安楽死することは悲しいことではない。やり残したことは何もないし、本当に幸せな⼈⽣だったの。やっと夢が叶うのよ」。過酷な幼少期を経て、度重なる困難にぶつかろうとも、たった独りで⼈⽣を切り...

『帆花』:脳死に近い娘と生きる、ある家族の淡々とした日常

2本目に紹介するのは、『帆花(ほのか)』というドキュメンタリー映画です。生後すぐに医師から「脳死に近い状態」と宣告された女の子・帆花さんと、彼女を取り囲むご家族の日常を追った作品です。映画にはナレーションがなく、ただ静かに、淡々と彼らの毎日が映し出されていきます。

世間からは「子どもを無理やり生かしていてひどい親だ」と批判されることもある、とお母さんの理沙さんは語ります。けれど、映画を観ていると、その批判がいかに表面的なものかが分かります。

最初は声も出せなかった帆花さんが、少しずつ声を出せるようになり、「どっちがいい?」と聞くと「あーあー」という発声で意思疎通が取れるようになる。右手が少し動かせるようになる。何より、身体がしっかりと大きくなっていっている。そこには「確かな成長」があるのです。

毎日毎日、丁寧に身体を拭いてあげて、痰を取ってあげて、優しく話しかけて、外の景色を見せてあげる。我が子のためにできる限りのことをしてあげたいという親の思いが、画面から痛いほど伝わってきました。

劇中、特別支援学校への入学が決まり、嬉しそうにランドセルや服を選ぶご家族の姿があります。「先のことを考えたら、いつ容体が変化するか分からない、自分たちが世話できなくなったらどうなるのか……」と、不安は尽きないはずです。それなのに、先の不安に押しつぶされるのではなく、「毎日を一生懸命、楽しく生きよう」とするご家族の姿に、ものすごく感動しました。

それと同時に、毎日バタバタと過ごしている自分を振り返り、「私はこんなにも我が子と向き合ってあげられているかな?ちゃんと目を見て、変化に気づいてあげられているかな?」と、身が引き締まる思いがしました。

誰にでも起こり得る現実と、教えてもらった「今」の大切さ

帆花さんは、妊娠中は何も問題がなかったものの、出産時にへその緒の動脈が切れて脳に酸素が届かなくなったことで、障害を負ってしまいました。これは、誰にでも起こり得ることです。特に同世代で、年の近い子どもを持つ親として、この出来事は決して他人事とは思えず、すごく身近に感じられました。もし私が理沙さんの立場になっていたとしても、全然おかしくないのです。

私はつい、「何年後の生活は……」「何年後に貯金がいくらになっている予定で……」と、先の未来のことばかり考えて不安になったり、イライラしたりしがちです。

けれど、家族で健康に生活できているのは、けっして当たり前のことではありません。病気や事故は、日常のすぐそばに「谷」のように広がっていて、ふとした瞬間に私たちは簡単にそこへ落ち込んでいってしまう。

だからこそ、まだ見ぬ未来をあれこれ心配するより、「今日を、今を、大切な人と楽しく過ごすこと」に、もっともっと意識を向けた方がいいんだなと、この映画に大切なことを気づかされました。先のことは、その時が来たら心配すればいい。私はすぐにこの大切なことを忘れがちになってしまうけれど、この映画の余韻とともに、しっかりと胸に留めておきたいです。

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生後すぐに「脳死に近い状態」と宣告された帆花ちゃん。 母親の理佐さん、父親の秀勝さんと過ごす家族の時間にカメラは寄り添う。常に見守りが必要な帆花ちゃんとの生活は誰にでもできることではない。でも、理佐さんと秀勝さんの2人にとってはあたりまえで、普通のこと。いろんな場所に出かけていき、絵本を読み聞かせ、お風呂に入れ、吸引を...
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